「月刊宝島」

# 「週刊ダイヤモンド」2006 年 2 月 11 日号

* プロだったら慎重になり過ぎて失敗する局面でも、自分は素人同然だから強気を押し通せる。
* 無理に背伸びをせずに、自分にしっくりくる投資法で、腰を据えて取り組むのが王道。

# 「週刊 SPA! スパ」2006 年 2 月 21 日号

* やめられないんです。
中毒なんですよ。
いくら儲かっても損することのほうがショックで、すぐに取り返したくなる。
だから一日が長いんです。
長くて、本当に辛いんです。
大損するまでやめられないでしょうね。
もしやめたとしても、日経平均が上がるのを見て、その分「損した」と、また自分が辛くなるのがわかってますから。
* 大きな買い物はこの家と、新車のマジェスタ、パソコン 3 台ぐらい。
お金を使うの好きじゃないし、使い方もよくわからない。
今は株のことで土日も頭がいっぱい。
人といても落ち着かないから、外出も近所を散歩する程度。
今一番の望みは、株をやっていなかった学生時代のような、普通の暮らしがしたい。
* 就職しないまま実家でパラサイト生活ですし、「株ニート」と批判されても、製造業で伸びてきた国ですから仕方ないでしょう。

# 「Diamond ZAi ダイヤモンド・ザイ」2006 年 3 月号

* (個人情報が)出てしまったのはしょうがないけど、慣れていないので急に取材が殺到して、正直精神的につらい時期もありましたね。
ええ、ZAi は読んだことありますから。
* (ジェイコム株は)予想初値が 100 万円と言われてましたから、気配値の 67 万円程度じゃ寄り付くわけないと思って見てたんです。
そしたらいきなり寄って、しかもどんどん安くなっていく。
これはチャンスだと思って 50 株ずつ買っていったんです。
* 予想していた値段の半値だったから思い切り買えた。
* 市場全体を見渡して、その時々で資金がきている銘柄を買ってるんです。
鉄鋼、商社、自動車、銀行……こういう銘柄は循環で物色されてますから、その時々の波に乗るっていうか。
あとは全体の動き。
日経平均先物を見ながらイケそうだったら多めに買うし、ヤバそうだったらすぐ降りる。
上げてもいないのに長期で持つことはまずないです。
手法といえるのはそれだけで、まぁ始めた時期が良かったんでしょうね。
* 精神的にかなり辛いです。
NY 市場が下げていると、それだけで数億円損するわけで、朝から滅入りますよ。
そんな心配を毎日毎日。
もう株なんてやめたい、でも市場が開いているのにやらないのも(儲けるチャンスを逃すことになるので)辛い。
やってもやらなくても辛いから、しょうがなくやってるんです。

# 「月刊宝島」2006 年 4 月号

* 部屋数ですか?
数えたことはないですね。
* 今日は 1 億 3000 万円負けちゃいました。
ホント下手くそというか……。
* 洋服には興味がないから。
* 子どもみたいなものしか食べられない。
カレーとかハンバーグとか。
生魚?
ありえない。
* 地合がいいから儲かっただけ。
* 1 日 1 億損するか得するか、そんなところ。
一日 20 億円も稼げばアドレナリンが出るけど最近はないし、もうつらいだけ。
* 目の前にエサがあるのにみすみすやめられない。
* やめられても、相場が上がっているのを見れば損した気分になって余計つらくなる。

# 「月刊 CIRCUS サーカス」2006 年 4 月号

* 実は僕の元手、子供の頃から貯めてたお年玉と、大学時代にバイトで稼いだものなんです。
* 2000 年に、当時まだ盛んじゃなかったネットトレードに興味を持ったんです。
次第にバイトより簡単に儲かることに気付き、就職も考えなくなった。
* これ(8 時 20 分に出始める気配値)を見ながら日経平均の動きをイメージすることが大事なんです。
寝坊しないために目覚ましを 3 つ、5 分おきにセットしてます。
でも、夜中に米国市場が気になって、朝方に寝ても、この時間には勝手に目覚めてしまいますが……。
米国市場が下げていると、それだけで数億は損します。
そんな日は朝から気が滅入っちゃうので、最近はあまり見ないようにしてます(笑)。
* (場が立っている時間は、トイレに行くヒマすらないのは)1 分の値動きで数千万円損することが実際にありますからね。
後場が終わると精神的に疲れ、しばらくはグッタリしてます。
* (2002 年後半は)親に就職を勧められ、資産も伸びず精神的に厳しかった。
* (2004 年は)大型株の動きがあまり良くなくなってきたので、仕手っぽい株や、フィデック、タカラバイオなどの IPO 銘柄など個別に盛り上がっている株を中心に売買しました。
* たまに、その銘柄を買っている人がパニックに陥るような暴落が起きることがある。
左の銘柄(石井鐵工所・福島銀行・クラリオン・東京テアトル)のほか、01 年末の宇部興産、02 年半ばの大手銀行株などです。
ところが、この暴落時が絶好の買い場なんですよ……。
* 株価がジリジリと下がる状況を受け、ある人が損失に耐えられなくなり、株を売りますよね。
すると株価はさらに下がり、これを受けて別の人も損失に耐えられなくなって株を売る、すると別の人も恐怖に駆られ……。
* 最後には、売ろうと思っていた人がほぼ売り尽くしてしまい、これ以上は売る人がいなくなる。
そして“この安値なら買いだ”と判断した人が殺到し、一時的に暴騰するんです。
これを“リバウンド”と言います。
* これ(乖離率)が 28 ~ 68 %(市場やセクター、地合いにより異なる)を超えると異常な高値、安値を付けているとある程度判断できます。
僕は有料のチャートソフトを使っていました。
でも逆張りは非常に難しいので、あまりおすすめできません。
* 株価は不思議なもので、会社の価値は何も変わってないのに、その日のニューヨーク市場や先物の動向など、相場全体の雰囲気で上下するんですよね。
* 仮に鉄鋼株を例にとると……たとえば相場の雰囲気がいい日などは、住友金属、新日本製鐵、神戸製鋼所、JFE ホールディングスなど、その分野の主力株が軒並み騰げるんです。
* 連れ高にはパターンがあるんです。
たとえば鉄鋼なら、前兆として上の 4 社のどれかが、日経平均とともに騰げ始める。
しかしこの前兆段階だと、他の 3 社のどれかが、まだ騰がってなかったりするんです。
そんなときすぐ買いを入れるんですよ。
* 騰げるときには相場全体が一気に騰がるから、連れ高を利用した方が儲かるんです。
* それ(連れ高が予測される瞬間を具体的にどう見極めるのか)ばかりは様々な企業の値動きを 1 日中見て“体得する”ほかないですね。
* 毎日これ(登録銘柄リスト)を見続けると“一気に下がっていたハイテクが値を戻し始め、すると日経平均が上がり、相場が強くなってきたのを受け鉄鋼も騰げ始める”というイメージが湧くんです。
* 儲かったのは僕の実力じゃなくて、単に時代のおかげ。
すべては相場環境しだいなんですよ。
* (IPO 銘柄は)インターネットの情報サイトで、どんな会社か、予想価格はどれくらいかを調べているだけですよ。
複数のサイトの予想株価と相場の雰囲気を総合すれば、今後の展開はだいたい読める。
* (先物相場は)非常に利用価値が高い。
どちらかといえば、先物が動いた瞬間、どれだけ早く反応できるかの勝負ですよね。
(注文を出す場面になると)考えるより先に手が動く。
それほど反射的なんです。

# 「週刊文春 BUSINESS」臨時増刊 4 月 5 日号

* いやあ、今日(ライブドアに家宅捜索が入った翌日の一月十七日)は大変だったんですよ。
ライブドアが下がって、新興市場も全部ダメで。
朝から二億円ぐらい損しました。
* 今日は結構、大変だったんですよ……。
(画面上の値下がり銘柄ランキングを見せながら)これが百番目、百番目でもこれくらい下がってる。
* ライブドアは持ってなかったんだけど(笑)、大引けでは九千万円ぐらいの損失。
(何で取り返したの?)いやあ、フジテレビのデイトレとか……。
あと、楽天で結構戻したんです。
量(出来高)が多いから。
寄り付きは安かったけど、一回戻った。
まあ、四十億円ぐらいしか持ち越してなかった。
* (昼食のメニューは)ほとんどカレー。
* 朝起きて、取引のあとも午後四時ぐらいまでいろいろやって、自由時間はそんなにない。
* (子供の頃は)自宅に八十本ぐらいゲームソフトがあったから、みんなで集まって遊んでた。
小学生の頃よく読んでた漫画は「少年ジャンプ」とか。
普通の子供ですよ。
* 大学は中退してるんです。
四年までは大学に行ってたけど留年して、株をやってたら勉強が頭に入らなくなってきちゃった。
あと八単位取れば卒業できたんだけど、その辺から「億」になってきたし、株から目を離せなくなってだんだん学校に行かなくなり、「まあ、いいや」って。
* 長時間座っているから椅子だけはいいものが欲しかった。
* 最初の頃は、「株なんかやめて早く就職しなさい」って言われていた。
特に母。
相場が悪いときは大きな損失を出して、家族で食事をする時に頭を抱えて溜息をついたりしてたから。
儲かったら儲かったで、「そんなに(金が)あったら一生食べていけるんだから、……また損するかもしれないし」って。
自分でも百回以上やめようかと思った。
* (マスコミ誌上などで「ニート」と呼ばれることは)別にいいんじゃないですか。
株で儲かっているからって良く言われないほうがいいと思う。
製造業で伸びてきたのが日本のいいところだと思うんです。
資源のない国なのに、技術力でここまで成長した。
株で儲けて尊敬されるような世の中にはなってほしくない。
だから、株で儲けても「ニートだ」ってバカにされるような言い方でいいのかなあ。
* (投資顧問や出版の誘いは)全部断っています。
まだ本は書きたくないし、自分で株がそんなにうまいと思っていないので、人を混乱させたくない。
* (株をやめたらどうするか)考えないわけじゃないけど、それを人に言ったら意味がないじゃないですか(笑)。

# 「月刊宝島」2006 年 5 月号

* 今日(3 月中旬)はプラス 6000 万円くらいですね。
* 毎日チェックしているのは 700 銘柄くらいですね。
* 1 月初旬は 12 月に IPO したファンコミュニケーションやナノメディアなどを中心に取引しました。
ライブドアショック以降はイートレード、インデックスなど新興市場の大型株を軸に。
2 月からは東証の大型株が中心でしたね。
* 相場の状況は一日ごとに変化しますから、それに対応していっただけ。
とにかく、ボクは相場の流れに逆らわないだけなんですよ。

# 「文藝春秋」2006 年 5 月号

* 「倉田(真由美)さん、デイトレード体験してみませんか?」
文藝春秋の W さんからこんなオファーをいただいた。
「うちで百万円用意しますんで、それでデイトレを実際にやっていただいて。勝った分は倉田さんのもの、負けた分はうちがかぶりますから」
「えっ!じゃあ、私は損することないの?」
「ええ。ノーリスクハイリターンってことになりますね」
そりゃおいしい。デイトレって大して興味なかったけど、一度は経験してみておきたい気もするしなあ。
「とりあえず、誰かデイトレの先生に基礎を教わりに行きましょう。倉田さん、誰か『この人に!』って希望はありますか」
デイトレの先生……だったらやっぱ、あの人がいい。
「みずほ証券のジェイコム株誤発注で、二十億円儲けたヤツ!確かまだ二十代なんだよね」
「ああ、彼ですか。最近ちらちら雑誌で見かけますし、オファーしてみましょうか」
そして数日後、W さんから連絡がきた。
「みずほ誤発注で大儲けした彼、OK とれました!彼のデイトレの様子を見に、彼の家に行きましょう」
我々は手土産にマクドナルドのハンバーガーを持って(何にしようか迷ったのだが、金持ってるし何でも買えるだろうから、一応気持ちだけでもってことで)、千葉にある K 君の家を訪ねた。
「この家も、彼が二億円くらいで購入したらしいですよ。現在の彼の資産は百億近いそうですから、二億なんて彼にとっては大したことないんでしょうけど」
「はあ?ひゃ、百億?」
どどど、どういうこと?株って、デイトレって、そんなに儲かるの……?
* 「こんにちは」
豪邸の中から我々を迎えてくれたのは、見るからに全然日光に当たっていなそうな、ひ弱な感じの若者。着ている物も高級品なんかではなく、金持ちの匂いは全然しない。道を歩いていたら中学生にカツアゲとかされそうな、そんな青年であった。
「こんにちは、今日はよろしくお願いします。私たち、まったくの素人なので何も分かりませんが……」
とりあえずこれ、お土産です、とマックの袋を手渡す。家の中は家具も少なく、広いが閑散とした感じだ。彼がデイトレをしている二階の部屋に、我々を案内してくれた。
大きなパソコンにたくさんのモニター。それぞれに表や会社名が書かれた画面が開いているが、なんのことやらさっぱり分からない。
「ここで何億何十億を動かしているわけですね」
W さんが感慨深げにつぶやく。私は尋ねた。
「K さんて、もともと資産を持ってたの?最初はいくらくらいから始めたの?」
「最初はバイトで貯めた百六十万からですね。五年くらい前になりますか」
「えっ!百六十万~!」
驚きで声がハモる私と W さん。
「そ、それが五年で百億近くになったんですか!」
「まあ、始めた時期がよかったんですよ」
さらりと答える K 君。
「本屋で株で儲けた人の話を立ち読みして。僕もやってみようと思って、なんとなく始めたんですよね」
たった一冊の本がきっかけで、億万長者になったわけか。もしそれが「スロットで食う!」とか「パチンコで稼ぐ方法」とかだったら、また別の道を歩んだのだろうか。
「とりあえず場が始まったら、後ろで見ていてください。何をやっているのか分かんないだろうけど」
十三時の株式市場午後のスタートと共に、画面に釘付けになる K 君。しきりにいろんな会社の株価やらチャートやらを開いたり閉じたりしている。そして時折、数字を入力したりしているのだが、スピードが速すぎて何を書いているのか全然読み取れない。
「指値とか株数とか、どうやって決めてるんですか」
W さんの質問に、
「適当ですね」
K 君はあっさり答える。全然参考になんねーよ、それじゃ!
まあでも、確かに勘とかそういうものなんだろうな。長く真剣に株と向かい合っている人間にしか、分からないものってあるだろうから。
しかし、しばらく見ていても「なるほど、こういうもんなのか」という発見は、まるでない。ともかく何をやっているのか皆目分からないのだ。私は前日徹夜で原稿を書いていたこともあり、
「悪いんだけど、すごく眠いから横になって休んでてもいいかな」
場が終わる三時まで、うとうとさせてもらうことにした。相当疲れていたので、初めて来たお宅、しかも初めて会った人の前でもけっこうへっちゃらで眠れる自分の神経がありがたかった。
思いの外ぐっすり眠れて、すっきりした私。対して W さんは消耗しきった顔をしている。午後三時、本日の勝負の時間は終わった。
「まあ、こんな感じで毎日過ごしています」
K 君はようやく画面から顔を上げ、私たちに言った。
「今日の場はどうでしたか」
「そうですね、午前中はあんまり動きがなかったですけど……後半はけっこう激しかったですね」
「今日はいくらぐらい稼いだんですか?」
すると返ってきた答えが、
「うーん……三千五百万くらいですか」
はあー?さ、三千五百万……!い、いちにちでそんなに……?
絶句する W さんと私。
「た、単位は円だよね?ペソとかじゃなくて……」
「は?」
「何言ってるんですか、当たり前でしょ倉田さん」
だって、日給三千五百万だなんて。
* 「勿論、損することだってありますよ。一日で一億損したこともありますし」
K 君は言う。
「刺激が強過ぎて、辛いですね。簡単に何千万何億が動くから」
「……楽しいの?株……」
「いや、全然楽しくないです。苦しいですよ」
即答する K 君。そして彼は続けた。
「でも、止められないんですよ。いつも頭の中は株のことばっかりですから。場が終わってもああすればよかった、こうすればもっと勝てた、ってずっと考えてますし。もう、完全に中毒ですね」
こんなに刺激のあるものって他にないですから、と。二十代で一生遊んで暮らせるだけのお金を手に入れて、でもあんまり幸せそうじゃないように見える。
「僕はお金を遣うことが、全然楽しくない人間なんですよ。食べるものも特にこだわりないし、着るものなんて何でもいいし。趣味もないですしね」
本当に、株だけの人生みたい。確かに、他人と交流することが全くない仕事(?)って、恐ろしくつまらなそうだよなあ。私も服を買ったりバッグを買ったり高いものを食べたり、「金を遣う」ことでハッピーになれるタイプじゃないので、彼の気持ちは分かる気がする。
株、デイトレについては聞くこともそれ以上ないので(ある程度のことを知らないと質問なんてできないし)、我々二人はお暇することにした。見送ってくれた若き億万長者の姿は弱々しく、少し寂しげに見えた。