ジャッジメンタル運用とプロセス運用

定性判断/定量判断、アクティブ運用/パッシブ運用、ジャッジメンタル運用/プロセス運用・・・と、運用手法を対比させる用語はいくつもある。定性・アクティブ・ジャッジメンタルと、定量・パッシブ・プロセスはそれぞれ何となく同じカテゴリーに属する感じがするが、それぞれ微妙にニュアンスが異なる。

私の場合、後者のカテゴリーに属する運用を担当しているが、あなたの専門とする運用手法は何ですか?と問われた場合、結構答えるのが難しい。主に担当するファンドはパッシブ(インデックス)ファンドだが、アクティブ運用のプロダクトを持ってみたいという願望もそれなりにあるし、現状でもエンハンストインデックス運用やクオンツアクティブ運用にも多少はタッチしているので、完全にパッシブ専任、という訳ではない。

また、パッシブ運用というと、定量(クオンツ)判断中心なイメージがあるが、実はかなり定性的な判断も行う。そのため、定性/定量のバランスが取れた判断能力が要求されるので、定量判断による運用を担当しています・・・というのも実態にそぐわない。

個人の趣向と実際の仕事内容を総合すると、「私の専門はプロセス運用です。」という回答が最もしっくり来る気がする。では、プロセス運用とは具体的にはどのような運用スタイルなのか。BGIあたりのHPを見ればその単語を目にすることが出来るが、一般的にはあまり馴染みのない用語だと思う。システム運用、と言った方が一般的かも知れない。

まず、プロセス運用とジャッジメンタル運用を簡単に定義してみる。

■ジャッジメンタル運用:
ファンドマネージャーが、都度投資判断を実施する運用。判断を下す際の根本的な運用哲学(戦略)は一貫していなければならないが、個別の投資判断(戦術)はその時々のマーケット環境を考慮し決定する。人間が最新の情報を用いてリアルタイムで判断するため、機動性・柔軟性の高い運用が可能な反面、運用プロセスが不明瞭、FM個人の判断に依存するため判断にバイアスがかかりやすい、といった欠点がある。

■プロセス運用:
運用を開始する際に、運用哲学のみならず、個別の投資判断のプロセスまで明確に定義し、実際の運用は予め定められたプロセスに従ってシステマティックに実施する。運用プロセスの透明性が高く、一貫性の高い運用が可能な反面、過去通用したパターンが将来も通用するという前提を置いた運用手法なので、環境変化に弱い(機動性に欠ける)、運用手法が硬直的になりがち、といった欠点がある。

教科書的な定義はこのような感じだろうか。あと、ビジネス上は、プロセス運用は一旦システムを組んでしまえば、大規模なアナリスト部隊を抱えたりする必要もないので低コストで済む、という点も重要だ。

前者に強い運用会社はフィデリティやキャピタル、後者はBGIやステートストリートあたりだろうか。日系の運用会社は総合力重視(総花的?)なので、外資系ほど強烈なブランドイメージはないが、例えば信託銀行であれば三井アセットが後者に強い、とか微妙な強み・弱みが存在する。

で、まどろっこしい前振りはいいから結局どっちがいいんだよ、という突っ込みが入りそうだが、世の常として、どちらか一方が絶対的に優れている、ということはなく、前提条件次第で有利な条件は異なってくる。

一言で言うと、ファンドマネージャーのスキルが十分に高くて、且つ運用上の制約が少なく十分な裁量が与えられている場合はジャッジメンタル有利、そうでない場合はプロセスの方が良い、ということになる。