「KING キング」2007 年 10 月号

  • (8 月 17 日に)一日で 4 円以上も下がった為替の値動きは、7 年間の投資生活の中ではじめての出来事で驚きでした。
    前日の 16 日は、下げのきつい銀行株を中心に 80 億円を 30 銘柄に投資していたんです。
    ところが、買値からもどんどん下げ続けて、持っていた三井住友銀行株は買値の 87 万円からさらに下がり、一時 84 万円まで値下がりした。
    午後 1 時の時点では含み損が持ち株全体で 1 億 5000 万円という状態でした。
    それが午後、急激な値下がりの後、リバウンドを始めた。
    後場が引ける 3 時には逆に 2 億 6000 万円の含み益で終わっていました。
    それで持ち越したんですが、17 日にも乱高下は続いたんで、持ち株すべてを午前中に手仕舞いしていたんです。
    午後からはノーポジ(株を持たない状態)で過ごしていました。
  • 銀行株の戻りはよかったけれど、商社株や輸出関連株の下げがきつくて利益が相殺されてしまった……。
  • 今の資産は 176 億円で、すべて証券口座に入っています。
    今日はノーポジだから現金にしたければ、4 日後には 176 億円を受け取れるはずです。
    通常はだいたい 30 銘柄から 70 銘柄を保有していますが、株価のチャートなどが頭に入っている監視銘柄だけでも 600 銘柄から 700 銘柄くらいはあります。
    資金が多いと買うのも売るのも難しい。
    自分の売買で株価が上下してしまいますからね。
    だから東証一部の大型株くらいしか投資できないんです。
    銀行株だったら一度に 3 億円とか 5 億円は買えるし、三菱 UFJ 銀行やトヨタ自動車、三菱商事や新日鉄だったら一日に 10 億円くらい買うこともあります。
    売りの板情報を見て“三井住友銀に 2000 株”とあれば、20 億の売りということで、それに買いをぶつけていくわけです。
    こんなことを小型株でやっていたら、「なんでこんな買いを入れたんだ?」ということで取引所から電話が来ると思いますよ。
    それこそ誤発注じゃないかって(笑)。
  • 株は世界のさまざまな理由で上下している。
    アメリカや中国、ヨーロッパの株価動向や為替、商品市況、それらを総合的に頭の中で処理して銘柄を選びます。
    たとえば円高が進んだ場合、円高に強い銘柄を買うのではなく、それを悪材料にして売り叩かれる銘柄を狙っていく逆張りという手法です。
    トヨタ自動車とかホンダとか、丸紅、伊藤忠などの商社株とか。
    下げれば下げるほどリバウンドが期待できる。
    もちろん相場によって投資の仕方は違ってきます。
    上げ相場のときは、ただ強い値動きの株を買っていけばいいし、今のように下げ相場のときは、25 日移動平均線から株価が大きく乖離した銘柄を狙っていく。
    この夏の乱高下だったら、乖離率は 30 % くらいが目標です。
    大きく下げたところを狙い、リバウンドするのを待つ。
    下げ相場のほうが、儲けられることも多いんですよ。
  • 基本的には、1 泊から 1 週間くらいの保有をするスイングトレードです。
    株価が 2 % から 3 % 上昇すれば決済します。
    よほど相場がよくない限り、7 % から 8 % まで上昇するのを待つようなことはしないですね。
    株価 1000 円の銘柄が 700 円まで下落したときに買えた場合、とりあえず 750 円から 760 円まで戻れば売りますよ。
    下がった株価が一直線に元に戻ることはないですから。
    100 億円購入していた場合、1 % 値上がりすれば それで 1 億円の儲けですから。
  • PER や PBR などの指標は、短期売買にはあまり関係ないですね。
    でも、まったく気にしないわけではありません。
    商社などは事業の実績がある割には PER が低いですし、その分、資産下落のリスクも少ないと考えているから買いやすい。
    反対に新興市場銘柄は、PER が高いから、値下がりするとリバウンドしにくいと考えています。
    最近は公募割れとかもよくあるし、新興市場株には投資していません。
  • たまたま権利が確定する日に株を持ち越すと配当金が貰えます。
    前回の中間決算のときに入ってきたのは 4000 万円でした。
    それが 2 回あるから、年間 8000 万円くらいですね。
    ただ、配当が欲しくて買っているわけではないし、配当のいい株は権利が確定した翌日、それ以上に株価が値下がりする傾向にあるので、むしろ配当に影響されない配当利回りの低い、値動きだけを重視できる銘柄のほうが買いやすい。
    株主優待は、小売などのセクターに多いんですが、そういう株はあまり値動きがないので買いません。
    時々、優待の商品が送られてくるけど、あれは何株以上持っていると権利があるというだけで、たくさん株を持っていればその分だけ来るというものでもないから、優待品で家中あふれてしまうということはありません(笑)。
  • 海外の株式動向や為替の動きなど、できるだけ重要な要素を考えながら、関連銘柄を探すんです。
    さまざまな要素を組み込んでいけば、勝つ確率も高くなっていく。
    株式投資というのは、勝つ率の問題なんですよ。
    10 回やって 6 回勝てばいい。
    当然、損をすることもありますが、その中で損失額を小さくしていく努力をしていけば資産は増えていくんですよ。
    ただ自分の場合、損失額も 1 億、2 億が当たり前になってきていてそれが辛いんです。
    去年は 1 週間に 6 億損したこともありました。
    やはり 1 億円というのは大きな額ですし、これを稼ぐのは大変なパワーが必要ですから。
  • 大学 3 年の春にはじめたんですが、要は暇だったし、銀行に預けても利息もつかない状況でしたから。
    テレビゲームを始めるようにスタートしたんです。
    それがいつか投資にのめり込むようになって、大学も中退しました。
    卒業まで、あと 2 科目履修すれば卒業できたんだけど、株に夢中になって学業が頭に入らなくなってしまった。
    その頃は若かったし、失敗したら就職すればいいと考えていたんです。
    株を始める前は、就職について考えたこともなかった。
    今でいうニートになっていたかも。
  • お金を使ってまで事業をやるつもりはないです。
    人の上に立って何かやるのは苦手。
    一度はサラリーマンになってみたい気もするけど、どうせ肉体労働系の仕事しか廻ってこないでしょう。
  • (趣味と娯楽は)特にないけれど、ネットをやったり、バラエティー番組を見るくらい。
    株と関係ない番組が好きです。
    漫画はそんなに読むほうではないけど、福本伸行さんの漫画は好きですね。
    心理的なやりとりが面白い。
    逮捕前なら、ホリエモンにも会ってみたかった。
    酒はそんなに飲まないし、煙草は吸いません。
  • (儲けた日は)外食に行くくらいです。
    それも特別高いものを食べるわけじゃない。
    ファミレスではバーミヤンのチャーハンが好き。
    駅の立ち食いそばも好きで、ついつい入ってしまう。
    天ぷらうどんとコロッケをよく注文します。
  • 高い買い物と言えば、去年の夏に買ったこのマンションくらい。
    4 億 3000 万円でしたが、キャッシュで払いました。
    証券口座から銀行口座に移し替えて、それから振り込みしたんです。
    株で儲けていても、自分のように無職で担保もない場合は、ローンを組めないんですよ(笑)。
    ペーパードライバーだし、車は持っていません。
    都内で生活する場合はタクシーのほうが便利。
    駐車場も少ないし、人をひいたりしても危ないし。
    おまけにガソリン価格も上がっている(笑)。
    着るものにもこだわりません。
    今日の服だって、シャツは実家がある千葉県内のダイエーで買ったものだし、ジーパンも GAP です。
  • 株で損したストレスは、それを取り戻すことでしか解消しません。
    すでに生活レベルのお金が欲しくてやっているわけでもない。
    そこにチャンスがあるからやってしまう。
    株は一度やったら抜けるのが本当に難しい。
    何百もの銘柄のチャートが頭に入っていると、相場の変動を見るだけでやらざるを得なくなるんです。
    投資額を減らせばいいといわれるけど、そんなことは考えられない。
    中毒ですよ。
    それもものすごい刺激で、体が震えるときがある。
    ただ、ひと晩、100 億円分の株を持ちこしたままの時がいちばん怖い。
    ニューヨークが 1 パーセントの下げなんて聞くと、それだけで自分の資産は 1 億円下がっているわけです。
    それこそ頭がキーンとなって圧迫されるようなストレスを感じます。
    株価がわかる経済番組なんて怖くて見られない。
  • 今年の夏は、毎日のように悪い夢ばかり見ていました。
    決まってニューヨーク市場が暴落する夢なんです。
    慌てて持ち株を売ろうとマウスを動かすんだけど、クリックできない。
    慌てふためいているうちに目が覚めて、ああ夢でよかったと……。
  • テロやアメリカの暴落で、いつか大きな損失を被るような気がしてならない。
    そんな危険を冒してまで、株式投資を続ける意味があるのか?
    そう思うときもあります。
    大きく負けて、そこで自分の株投資が終わるのかも。
    一週間後にそうなっている可能性だってある……。